アクティブシニアのための心臓病読本

図4 QT延長と心室頻拍

心室が電気的に 興奮する時の 波形（トゲ）

心室の電気的な 興奮が醒める時 の波形（ヤマ）

一心拍に 相当する 心電図

トルサード・ド・ポアンツ と呼ばれる心室頻拍

QT間隔（正常）

QT間隔が 延長した 心電図

QT間隔（延長）

最近のがんに対する分子標的薬は、心電図に特徴的な変化をもた らしやすいことが知られています。分子標的薬の一部には心電図上 のQT間隔を延長する作用が知られています。QT間隔とは心電図上 の心室の電気的な（機械的ではありません）収縮時間（electrical systole）を指します。 図4 の心電図ではトゲの始まりからヤマの終 わりまでの時間間隔がQT間隔です。このQT間隔があまり延長し過 ぎるとTorsade de Pointes（トルサード・ド・ポワンツ）という特殊 な心室頻拍を発生させるために注意が必要です。QT間隔を延長させ る薬剤はたくさんあります。電解質のアンバランス（特に低カリウム 血症）もQT間隔を延長させます。元来、女性は男性より心電図上の QT間隔が長いことが知られています。したがってQT間隔を延長さ せる原因が、高齢の女性で複数重なる状態は要注意です。たとえば利 尿剤や漢方薬を病院でもらっている方が、たまたま下痢や嘔吐を起こ すとカリウムを喪失して低カリウム血症を起こします。この状態でさ らにQT間隔を延長させる分子標的薬を内服すると突然、心室頻拍が 起きることがあります 図4 。このような命に係わる不整脈を予防す るためには定期的な採血検査や心電図検査が大切です。

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