アクティブシニアのための心臓病読本

第 7 章 が ん

がん、抗がん剤と不整脈 第4章の不整脈でご紹介した心房細動は、がんともつながりのある 不整脈です。私が学生の頃は心房細動をみたら心臓弁膜症を疑いなさ い、と習いました。ところが現在は、心臓病以外にも高血圧、糖尿病、 肥満などの生活習慣病、喫煙や飲酒などの生活習慣、過労やストレス なども心房細動を引き起こすとされています。残念ながら加齢も心房 細動の原因のひとつですが、これらの心臓弁膜症によらない心房細動 は非弁膜症性心房細動と呼ばれています。そしてこれらの心房細動を 引き起こす要因の多くは、がんの危険因子でもあります。そのためが んの人は心房細動になりやすく、心房細動の人はがんにもなりやすい ということができます 図3 。心房細動では、心原性脳塞栓症を予防 するために抗凝固療法が必要です。血液サラサラのお薬です。最近は 優れた抗凝固薬が普及しており、飲みやすくなりましたが、それでも 出血性の合併症はゼロではありません。がんの方は当然、がんの病巣 からの出血も心配です。がんの方に心房細動や次のがん関連血栓症が 生じた場合の抗凝固薬の使い方は、まだ確立していません。今後の症 例の蓄積と臨床データの解析が必要と思われます。 3

と心

関係

図3 がんと心房細動に共通するリスク因子

加齢 糖尿病

がん

心房細動

ストレス

肥満

喫煙

飲酒

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