アクティブシニアのための心臓病読本

正常な細胞も攻撃していたのに対して、これらのお薬はがんに関わる 分子やがんへの免疫力だけに影響しますから、これまでのがんの化学 療法にみられた強い吐き気や食欲不振、脱毛などの副作用を抑えるこ とができます 図1 。したがって以前は入院しないと出来なかった化 学療法の多くは、今では外来で広く行われています 図2 。外来化学 療法を受けながら日常生活や社会生活を送られているがんサバイバー の方は、今後もますます増えていくことでしょう トリビア ❸ 。しか しこれらのがんに対する最新の薬剤がしばしば心不全を起こすことが 報告されています。アントラサイクリンという代表的な抗がん剤が心 不全を起こしやすいことは、以前から知られていました。そして最近 の分子標的薬も心臓の収縮力を弱める可能性が指摘されています。が んは治っても心不全で命を縮めては本末転倒です。それを防ぐにはが んと心臓病の専門医どうしの連携だけでなく、医師、薬剤師、看護師、 理学・作業療法士、ソーシャルワーカーなどが意見を言い合える多職 種連携が必要でしょう。チーム医療はどの領域にも必要ですが、命を 脅かす腫瘍と循環器の懸け橋となる分野では、とりわけ重要といえます。

図2 外来化学療法室

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