アクティブシニアのための心臓病読本
心臓再同期療法 心不全は、心室の動きが悪いことも原因のひ とつですが、心室各部の動きが同期していない ことが大きな原因です。心室壁の各部の動きは きちんと同期していないと、心臓は有効なポン プとして血液を送り出すことは出来ません。心 室壁の一部が収縮を開始しても他の部分がまだ 開始していなければ、収縮が遅れた部分は余計 な圧を受けながら収縮を始めることになります。 また先に開始した収縮は血液を送り出すことに は使われず、まだ収縮していない部分を押し広 げることに使われて、全くエネルギーの無駄に 3
図6
強い力で一気に押すと、 紙風船はしぼみやすい
弱い力でバラバラに押しても、 紙風船はなかなかしぼみにくい
なってしまいます 図6 。さらに心室壁の動きが同期していないと心 房と心室の間にある弁が完全に閉鎖せずに、心室が収縮する際に血液 が心房へ逆流してしまいますので、心臓はさらに疲弊します。 そこで左右の心室の動きをペーシングによって同期させることで 心不全を治療するのが、心臓再同期療法(cardiac resynchronization therapy:CRT)です。両心室ペーシングとも呼ばれます。わが国では 2004年に実用化されました。健康な心臓は、もともと同期して収縮 しています。心不全により同期しなくなったわけです。そこでこのよ うなデバイス治療を、心臓再同期療法とよびます。前に述べた植え込 み型除細動器(ICD)の機能を備えた心臓再同期療法(CRT-D)を最 初から行うこともありますし 図4 、植え込み型除細動器をすでに使っ ていれば、後に心臓再同期療法も可能なデバイスにアップグレードす ることもあります。お薬だけの治療では難しい心不全に対して、心臓 再同期療法は高齢者においても検討すべき治療法になりつつあります。
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