アクティブシニアのための心臓病読本

第 4 章 高 齢

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心臓弁膜症 心臓には大動脈弁、僧帽弁、肺動脈弁、三尖弁という四つの弁があ ります(第2章 図3 )。心臓弁膜症はこれら心臓の弁のいずれかまた はいくつかが機能異常を起こす病気です。心臓の弁は本来心房から心 室へ、または心室から動脈へ血液を一方向に駆出する役割をしていま す。したがって弁の機能異常とは、この一方向性の血液の駆出がうま くいかない状態です。具体的には、弁の狭窄(弁が狭いため弁を通る 血液の駆出が困難になる)か、弁の閉鎖不全(弁が緩いため弁を介し て血液の逆流が生じる)がおきます。心臓弁膜症の原因は多岐にわた ります。弁やその支持組織が硬化すると狭窄をきたしますし、脆弱に なると閉鎖不全をきたします。先天性の原因や外傷(胸部を強く打撲 した場合など)で生じることもありますし、他の心臓病(感染性心内 膜炎や心筋梗塞)が原因で発症することもあります。私が学生の頃に は、心臓弁膜症の多くはリウマチ性心臓病によるものでした。子供の 頃に急性リウマチ熱にかかるとその後心臓の弁がゆっくりと変性して、 大人になってから心臓弁膜症と診断され、投薬や弁置換術をされてい ました。ところが現在は高齢化社会を反映して、加齢にともなって弁 が変性したり、石灰化して心臓弁膜症となるケースが圧倒的に多くな りました。 心臓弁膜症では、弁の機能不全により心不全が起きないようにする ことが大切です。まずお薬による治療を行います。お薬で弁の機能不 全を直接治すことはできません。弁の機能不全があってもお薬で心臓 の負担を軽くしてあげるわけです。しかしお薬に抵抗性の心不全をき たしたり、心臓弁膜症が狭心症や失神を生じる状態では、弁の修復が 必要です。心臓の弁の形成術や置換術はこれまで人工心肺を用いた開 胸術によって行われてきました。しかし開胸術は、高齢者には体力を

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