アクティブシニアのための心臓病読本
も不整脈のない健康な生活を送られたい方や、不整脈の発作が出ると 心不全を繰り返すような方は、カテーテル治療を検討されてもよろし いかと思います。 不整脈のアブレーション治療で最近進歩が著しいのは、心房細動と よばれる不整脈の治療です。心房細動ではヒトの心臓の補助ポンプで ある左右の心房が小刻みに震えるような動き(細動状態)をしていま す。心室は正常な収縮と弛緩をしていても、規則的なリズムを保てな い状態です。心房細動は直ちに命にかかわる不整脈ではありません。 しかし心不全を引き起こしたり、認知症にも関係しています。何より 怖いのは、細動状態の左心房内の血栓(血液の塊)が全身性の塞栓症 や脳塞栓を引き起こすことです。この心原性の脳塞栓は、予後が悪く 社会復帰も困難ですから、心房細動は早期発見が大切です。社会的な 著名人がこの病気で倒れたことから多くの方が知る病気となりました。 心房細動の方は動悸やめまい、息切れを感じることもありますが、自 覚症状がなくて健康診断で偶然見つかる場合もあります。脳塞栓を起 こした後に初めて見つかることさえあります。自分で検脈を行うと脈 が全く不規則だったり、速すぎて数えられなかったり、家庭用の自動 血圧計で血圧を測ると心拍数が常にエラーと表示される場合は心房細 動を疑いましょう。最近はスマートウォッチが普及しています。ス マートウォッチが心拍不整を表示する場合も心房細動である可能性が あります。心房細動になるとさまざまなデバイス治療(第5章)の適 応も狭くなってしまいます。心房細動のカテーテルアブレーションは 日進月歩です。従来の高周波通電による焼灼以外に、最近ではバルー ンテクニック(ホットバルーンやクライオバルーン)やレーザー焼灼 が行われています。心房細動が生じた場合、カテーテルアブレーショ ンを早めに行う方が効果は大きく、再発も少ないことが明らかとなっ ています。心房細動と診断された場合には、是非早めに専門医の先生 にご相談下さい。
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