アクティブシニアのための心臓病読本
心不全 心臓は昼夜を問わず全身に血液を送り出すポンプとして働いていま す。心不全とは心臓がポンプとして正常な役割を果たせなくなった 病態です。あくまで病態ですから心不全とは特定の心臓の病気の名 前ではありません。ほとんどの心臓病は最終的に心不全をきたしま す。したがって心不全は多くの心臓病の終末像ということができま す トリビア ❷ 。心不全では心臓が送り出す血液の量が体にとって足 りなくなります。そうすると体は重要な臓器(脳や内臓)に優先的に 血液を回して優先順位の低い筋肉などの血流量は低くなります。した がって心不全の人の筋肉は萎縮し代謝が落ちて栄養が悪くなります。 心不全には心臓リハビリテーションが必要です。心臓リハビリテー ションにより、サルコペニアやフレイルによる筋肉の萎縮が改善する ことも期待されます。心不全ではからだの水分量やミネラルのバラン スを保つホルモンにも異常をきたすために足がむくんだり、尿量が少 なくなります。食欲もなくなり、息切れがしたりつねに倦怠感を覚え ます。さきほどの心筋梗塞では発症して早期に行うカテーテル治療に より救命率が大きく向上したことをお話しました。心筋梗塞で救命さ れる方は確かに増えましたが、その後長く普通の生活が出来ていたの に次第に心不全になってきたという方が、最近多くなりました。 心不全が進行すると入退院を繰り返すようになりますので、家族の 方の心労や経済的な負担も大きくなります。第3章でフレイルのお話 をしましたが、心不全の方の半数近くにフレイルがあるという報告も あり、フレイルがあると心不全で再入院する場合が多くなると言われ ています。心筋梗塞の危険因子のひとつに肥満があります。ところが、 心不全になるとむしろフレイルによる体重減少が予後を悪くするので す。これは「肥満パラドックス」といわれます。どうしてこのような 2
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