アクティブシニアのための心臓病読本
第 4 章 高 齢
図5 心不全の肥満パラドックス
インスリン抵抗性 交感神経の活性化 心不全
者の
心
臓
病
炎症
貧血
食欲低下
タンパク合成の低下
脂肪の減少
筋肉の減少
筋力の低下 運動耐容能の低下
体重の減少
パラドックスが起きるのでしょうか。心不全では自律神経の影響(と くに交感神経)や全身性の炎症、インスリン抵抗性などからタンパク 質の合成が抑えられ、筋肉量や脂肪量が減少しています。さらに心不 全では貧血も見られやすく、筋力低下や貧血がますます心不全患者さ んの運動能力を低下させます 図5 。このような悪循環を断ち切る意 味でも医学的な心不全管理に加えて適切な栄養管理と段階的な心臓リ ハビリテーションが大切といえます。 わが国では新たな心筋梗塞の発症数は頭打ちですが、超高齢化にとも なって心不全患者は毎年1万人ずつ増えており、2030年には130万 人になると予想されています。これを「 心不全パンデミック 」といい ます。日本人の死因のトップは悪性新生物(がん)で、次いで心疾患 (高血圧を除く)です。この心疾患の終末像が心不全であることを考 えると、「 心不全パンデミック 」という言葉を実感としてとらえることがで
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