アクティブシニアのための心臓病読本
まとめ 筋肉は運動以外にも過剰な血液中のブドウ糖を取り込んだりするさ まざまな働きがあります。特に下半身の筋肉は歩くことにより血液や リンパ液を心臓に戻す「第二の心臓」としても働きます。しかし筋肉 は加齢とともに少なくなり筋力も衰えます。近年、サルコペニアやフ レイルが問題となっています。低栄養による筋肉量の減少はサルコペ ニア、加齢による全身的な脆弱状態をフレイルと呼びます。フレイル はサルコペニアやオーラルフレイルなどの身体的な要因、抑うつや認 知症などの精神・心理的な要因、独居などの社会的な要因が関係した 病態といえます。早めに介入して要介護状態となるのを未然に防ぐこ とが大切です。骨粗しょう症は骨折しなければ無症状ですが、一度 骨折すると(脆弱性骨折)活動量が低下するために骨の脆弱性が進 み、骨折リスクは増大して骨折の連鎖を引き起こしてしまいます。骨 粗しょう症にも生活習慣が大きく関係します。バランスのよい食事と 骨を適度に刺激する運動を欠かさず、定期的な骨密度の検査を受けま しょう。 筋肉は運動に必要な臓器であるばかりでなく、さまざまな生理活性物質を分泌し ています。これらの物質はミオカイン(マイオカイン)と総称されます。ミオやマイオは 筋肉、カインとはさまざまな役割を果たす物質という意味です。ミオカインにはさまざ まな物質が含まれ、筋肉が必要以上に発達してエネルギーが浪費されるのを防ぐミ オスタチン、炎症を誘導するTNF-α、免疫細胞の暴走を抑えるIL-6、抑うつ気分を改 善するBDNF、認知症の予防効果があるIGF-1などが知られていますが、まだ詳しい 作用が分かっていないミオカインもあります。健康維持や老化予防に関する運動の 効果は、近年このミオカインで説明されることも多く、逆にフレイルやサルコペニアで はミオカインの効果が期待しにくいと考えられます。 トリビア❶ 6 筋肉が出すシグナル
52
Made with FlippingBook Digital Publishing Software