アクティブシニアのための心臓病読本

1 筋肉のはたらき 人のからだのはたらきを考えるときに、筋 肉がすぐに思い浮かびます。筋肉は運動を行 う時に使われるだけでなく、さまざまなはた らきがある臓器といえます。筋肉はからだ の中で640個もありますから、ヒトのからだ の中で最大の臓器です。筋肉の役割は運動を おこなうことだけではありません。それ以外 にも熱を生み出したり、血液やリンパ液を心

臓へ送り返したり、体が衝撃を受けた時にクッションの役割を果た しています。さまざまな物質を分泌していることも分かって来まし た トリビア ❶ 。冷え性の人は、概して筋肉の量が少ない傾向にあり ます。筋肉による熱産生が低いわけです。さらに筋肉は、インスリン のはたらきで糖分を取り込むことで、食後の血糖が急上昇するのを防 いでくれます。第1章でみた食後の血糖値スパイク(食後高血糖)は やせ型の20歳台の女性の5人にひとりで見られるというデータもあり ます( 第1章 図2 )。糖を取り込む最大の臓器である筋肉が少ないた め食後高血糖をうまく処理できないわけです。血糖値スパイクは糖尿 病への入口です。筋肉は糖分の代謝に深く関係しており、欧米人に比 べてやせている日本人に糖尿病が多いのはインスリンの分泌量が少な いことと筋肉量が少ないことが関係しているようです。 筋肉のなかでもとりわけ下半身の筋肉は、収縮を繰り返すことで重 力により下半身に留まりがちな血液を心臓に送り返しています。「足 は第二の心臓」といわれるゆえんです 図1A 。もちろんこれはよく歩 いて下半身の筋肉を使っている場合の話です。あまり歩かない時に足 のむくみを感じることがあります。むくみはなくてもいつも履いてい

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