アクティブシニアのための心臓病読本
まとめ 心臓は環境変化に対して素早く機能調節を行いポンプ機能を維持出 来る優れた臓器です。心臓は細胞から構成されていますので、加齢に より自然に細胞機能が衰えてゆきます。何らかの疾病により二次的な 因子が加わると加齢による機能減衰が加速され環境変化への対応が困 難になります。対応出来なくなり機能に破綻が起きるときが心臓の寿 命です。心臓に負担をかける二次的因子として、動脈硬化、高血圧、 糖尿病、肥満、低蛋白、ビタミン不足、筋萎縮、酸素摂取量減少、基 礎代謝低下などがあります。これらは生活習慣病から起こってきます。 心臓を健全に維持するためにはこれらの因子を可能な限り避けること、 すなわち、生活習慣病の予防が大切なのです。 8 「ゾウの時間 ネズミの時間 サイズの生物学」(本川達雄 著、中公新書)によ ると哺乳類は種を問わず、ゾウもネズミも一生で心臓は15~20億回打っていま す。これを本川氏は「心拍数一定の法則」と呼んでいます。これは動物の種を 問わず、心拍の周期が体重の1/4乗に比例することによります。実際にハツカ ネズミの心拍周期は0.1秒、ゾウでは3秒、ヒトでは1秒です。すると心拍数は ハツカネズミで600拍/分、ゾウで20拍/分、ヒトでは60拍/分となります。 トリビア ❶ ヒトの心拍数 らは心不全(第4章)では血液中の濃度が増加します。ANPは心不全 の治療、BNPは心不全の診断に広く利用されています。また、骨格 筋で主に生成されて筋崩壊を促すミオスタチン(筋細胞で生成される 蛋白質であるミオカインのひとつ)は心室筋でも生成されます(第3 章 トリビア ❶ 参照)。心不全では心筋からのミオスタチンの生成が 増加して骨格筋に作用し筋崩壊を惹起させます。心不全で筋萎縮が起 こるゆえんです。
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