アクティブシニアのための心臓病読本

図7

九州大学医学部キャンパスの田原通り

田原淳博士写真(1873-1952)

わち、心房が収縮して血液が心室に送られるときには心室は拡張(弛 緩)していなければなりませんし、心室に血液が充満された後に心室 は収縮し血液を拍出出来るのです。つまり、心房収縮と心室収縮には 時間差が必要なのです。房室結節の伝導速度が低いことは心房収縮と 心室収縮の時間差(0.12~0.2秒)を作っているのです トリビア ❷ 。 このようにして刺激は房室結節を通過したあと直ちにヒス束、左右の 脚、プルキンエ線維に伝えられ、心室筋は尖端から収縮を始め、血液 を動脈へ絞り出すように収縮します。 通常の心筋(作業筋)は収縮することが仕事ですが、ヒス束、左右 の脚、プルキンエ線維などの刺激伝導系の心筋特殊細胞は一般の心筋 (作業筋)細胞に較べ少し大型ですが収縮は殆どなく刺激を伝えるこ とが主な働きです。伝導速度は交感神経の働きにより速くなり副交感 神経の働きにより遅くなります。 細胞と細胞とは細胞間接合部で連結しており、その部は特別な構造 をしたギャップ結合から成り細胞間の興奮伝導の場として働いていま す。伝導速度が遅い洞房結節や房室結節、伝導速度の速いヒス束、左 脚・右脚やプルキンエ線維、そしてその中間の心房筋、心室筋では、 ギャップ結合の性質が異なっているのです。この結合部機能は複雑な 機構で調節されております トリビア ❸ 。

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