アクティブシニアのための心臓病読本
第 2 章 心 臓
3 心臓の刺激伝導系 心臓には心筋でありながら、収縮を主な働きとする心房筋や心室筋 と異なり、電気的な刺激を伝導することを主な働きとする特殊心筋細 胞群から構成された系があります。 洞房結節で生成された刺激はバッハマン束(発見者の名前で Bachmann bundle(1916)と呼ばれます)を介して左心房細胞へ伝わり ます。また右心房細胞に伝わった刺激は、右房内の3っの伝導路(前、中、 後結節間路、1963)を介して心房と心室との境目にある房室結節(発見 者の名前で田原結節、Tawara node(1906)と呼ばれます)に伝わ ります トリビア ❷ 。房室結節では刺激の伝導に少し時間がかかり、 次にヒス束(房室束、発見者の名前でHis bundle(1893)と呼ばれ ます)へ伝えられます。ヒス束から心室隔壁(左右心室を分ける壁: 心室中隔)にある左脚、右脚(田原の発見、1906)へ、次に心室 作業筋の直下に網状に分布しているプルキンエ線維(発見者の名前で Purkinje fiber(1845)と呼ばれています)に素早く伝えられ、そしてそ の刺激は心室筋へ伝わって行き心室筋の収縮をもたらします。これらの 刺激を伝えることを主とする特殊な心筋細胞群を「心臓の刺激伝導系」 といいます 図4 。この「心臓の刺激伝導系」という呼び方はもともと 田原(1906)によって命名されたのが始まりです 図7 トリビア ❷ 。 刺激(興奮)伝導速度は、洞房結節(0.10~0.02m/秒)や房室 結節(0.02~0.03m/秒)では心房筋(0.5~1.0m/秒)に較べては るかに小さく、バッハマン束(1.0~1.5m/秒)は大きいのです。ヒ ス束(1.0~1.5m/秒)、左右脚(1.5~2.0m/秒)、プルキンエ線維 (3~4m/秒)の伝導速度は心室筋(0.5~1.0m/秒)にくらべてはる かに大きいのです。 先に述べましたように、心房と心室は同時に収縮はしません。すな
のし
く
み
と
は
た
ら
き
25
Made with FlippingBook Digital Publishing Software