アクティブシニアのための心臓病読本
でなくても心筋梗塞になった場合に、発症から病院到着までが遅れた り、ドアトゥーバルーン時間が延長したり、心筋梗塞の合併症が以前 より増加したという報告もあります。心筋梗塞の治療も含めて、救急 医療が正常に戻る日が一日も早く来て欲しいものです。
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心不全 一般に高齢者では、普通の風邪を引いてもそれをきっかけにして心 不全が悪化することがよくあります。心不全の急性増悪を経験するの はほとんど冬場です。新型コロナウイルス感染症は全身に強い炎症を 引き起こしますので、体内では炎症性サイトカインという物質が多く 作られます。炎症性サイトカインには多くの種類があり、熱を出した り、免疫の働きを調節したりする役割があります。そして心臓の収縮 する力を弱める働きをするものもあります。新型コロナウイルス感染 症になると肺炎による発熱や低酸素血症が心臓に負担をかける上に、 ある種の炎症性サイトカインが心臓の働きを弱めることによって心不 全がいっそう悪くなるわけです。これまで長引くコロナ禍で病院受診 を控える傾向がありました。このような自粛生活が心不全を早めに発 見したり、早く治療を開始するのを妨げている可能性には十分注意し
たいものです。高齢者での心不全の急性増 悪は、早期発見と早期治療を行えばまた家 庭復帰できることが多い反面、これらの遅 れは命にかかわることもあるからです。ま してや第4章で述べましたようにコロナう つの状態になっていては、心不全になりや すい状況を作ってしまいかねません。
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