アクティブシニアのための心臓病読本

第 9 章 コ ロ

心筋梗塞 新型コロナウイルス感染症は第 8波では比較的軽症化しています が、最初に新型コロナウイルスがわ が国に入った当初は、重い肺炎を引 き起こしていました。最初の流行当 初、酸素マスクでは間に合わず、体 外式膜型人工肺(extracorporeal membrane oxygenation:ECMO: 「エクモ」と呼んでいます)が足り 2

ナで

こと

なくなることが、非常に危惧されていました。肺炎は低酸素血症に よって心臓に負担をかける上に、発熱や発汗、脱水を引き起こします。 これにより血液がドロドロになると、心臓に酸素や栄養を届ける冠動 脈の血液循環が滞ったり、停止することになり心筋梗塞が起きてしま います。一般に新型コロナウイルス感染症では、血管の中に血栓が生 じやすいとされています。また新型コロナウイルス感染症では全身的 に強い炎症が起きます。冠動脈のプラークはこの炎症に弱く、プラー クの表面の被膜が炎症で破れると血栓ができて冠動脈を塞ぐことにな ります。第4章で述べましたように心筋梗塞が発症すると、閉塞した 冠動脈を再灌流させるカテーテル治療を緊急で行う必要があります。 しかし新型コロナウイルス感染症の患者さんでは緊急でカテーテル治 療を行うことが困難です。治療はコロナ感染が収まってからになりま すから、心筋梗塞であっても急性期治療が大きく遅れるわけです。コ ロナ禍で一時は医療崩壊も現実味を帯びましたが、病院で一番コロナ 禍の影響を受けたのは、手術室やカテーテル室など、最も感染のリス クが高いとされる部門でした。新型コロナウイルス感染症の患者さん

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