アクティブシニアのための心臓病読本
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新型コロナウイルスと心臓 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)はいまだに人々の健康 生活を脅かしています。今や医療や健康に関する問題だけでなく、社 会問題もすべて新型コロナウイルス感染症を抜きに語ることは出来ま せん。発生当初の2020年は、新型コロナウイルス感染症は重症肺炎 を引き起こし、致死率の高いウイルス感染症として恐れられ、欧米で はロックダウンも経験しました。わが国でも感染の急拡大によって社 会経済活動が大きく制約されて、マスク生活が長く続いています。医 療機関や高齢者施設ではクラスターを経験したり、救急搬送困難事例 もみられた時期がありました。しかし、新型コロナウイルスは変異を 繰り返すうちに軽症化しているようです。現在、わが国でも新型コロ ナウイルス感染者数の全数届け出の必要はなくなり、マスクの着用も 個人の判断となり、ポストコロナ時代にはいった感じがあります。し かし新型コロナウイルス感染症は、糖尿病、心血管病、慢性腎臓病な ど基礎疾患のある方や、高齢者で重症化しやすいことには変わりあり ません。長引く面会禁止や面会制限で高齢者施設に入所されている高 齢者では認知機能が低下する傾向も現れました トリビア ❶ 。 新型コロナウイルスは鼻やのど、肺などに最初に感染しますが、心 臓の筋肉や血管の細胞にも直接感染することがわかってきました。ウ イルスがヒトの体の細胞に入るためには、ウイルスが細胞の表面にあ るレセプターと結合する必要があります。心臓や血管の細胞にも新型 コロナウイルス(の表面にあるスパイク)と結合するレセプターがあ ることが知られています。そして心筋が障害される方は新型コロナウ イルス感染症が重症の方に多く、また心臓や血管の合併症をきたすと 新型コロナウイルス感染症は重症化しやすいとされています。それで は新型コロナウイルス感染症は心臓にどのような悪影響をおよぼすの でしょうか。
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