アクティブシニアのための心臓病読本
ポリファーマシーの 現状と対策
第 8 章 ポ リ
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高齢者のポリファーマシーが問題となっていますが、残念ながらこ れには心臓病のお薬も多く含まれています。その原因は心臓病のお薬 は長期にわたって服用しなければならないものが多く、患者さんが自 覚しやすい有害事象も多いからです。血圧の変化による立ちくらみや 動悸、足のむくみなどは、誰にでも分かりやすい有害事象です。虚血 性心臓病で処方される抗血小板薬や心房細動で処方される抗凝固薬は、 俗に「血液サラサラのお薬」とよく患者さんに説明されます。血液が 固まるのに必要な血小板や凝固因子の働きを抑えるお薬ですから出血 を起こしやすくなります。 高齢者は皮膚が薄く弱い傾向にあります。皮膚が傷つくと皮下出血 を起こしたり、転倒した際に内出血してしまって、よく病院に相談に 来られます。自分で気が付く場所の出血は対応できますが、内臓や脳 血管の出血は本人には分かりません。急に容態が悪くなって入院が必 要になることもあります。さらにフレイルのある高齢者は、転倒する リスクも高くなります。そのため病院では転倒するリスクも考えて、 抗血小板薬や抗凝固薬を選ぶ必要があると言えます。これらのお薬に 関しては、最近では日本人の高齢者に見合った用量のお薬も出ていま す。また抗血小板薬と抗凝固薬の両方が必要な高齢者もおられますが、 これらをいっしょに投与する期間は最近ではなるべく短くする傾向に あります。もらっているお薬の種類が多いと感じていても治療で本当 に必要なお薬が6種類以上になることもあります。また6種類未満で もお薬が適正に処方されているとも限りません。お薬の種類や錠数だ けに気を取られるのでなく、適正な処方が行われているかどうかが大 切といえるでしょう。
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