アクティブシニアのための心臓病読本
は、まず予防が大切です。抗凝固薬は大切な予防薬です。またがんの 化学療法や手術治療などにより長期間ベッドで安静にすることが、血 栓症の原因の一つとされています。そこで長期臥床を避けて早めに離 床してリハビリテーションを行うことが勧められています。第4章で 触れましたリハビリテーションはがんの患者さんにもおこなわれてい ます。がんのリハビリテーションには、がん治療で損なわれた体力を 回復させ、がんやがん治療に関連した疲労を減らしたり、がん治療に よる有害事象を減らして、がん治療を完遂する助けになることが報告 されています。そしてがん関連血栓症には早期発見も大切です。専門 病院では血栓を疑うバイオマーカーの血液検査をおこない、画像検査 でイメージングすることで深部静脈血栓の早期発見につとめています ので、シニア世代のがんサバイバーの方はご相談してみましょう。 まとめ いろいろながんと心臓病はこれまであまり深い結びつきはないものと 考えられてきました。がんの専門医と心臓病の専門医がお互いにかかわ ることもほとんどありませんでした。ところがわが国で主な死因を占める これら二つの病気は、生活習慣を中心に、多くの危険因子を共有してい ます。またわが国では超高齢化にともなって、両方の病気を持つ方が増え ています。医学・医療の進歩により登場した最近の新しいお薬が、がんに 対しては素晴らしい抗がん作用を発揮するものの、心臓の収縮力やリズ ム、血液の凝固能に対しては深刻な悪影響を与えることも分かってきまし た。最近の抗がん剤ががんサバイバーに引き起こす可能性のある心不全 や不整脈、深部静脈血栓症をどのように予防・治療・管理していくかは腫 瘍循環器学(または循環器腫瘍学)の大きなテーマです。 5
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