アクティブシニアのための心臓病読本

第 7 章 が ん

トリビア ❶

心筋細胞も生まれ変われる?

ヒトの心臓を形づくる心筋細胞は、生後すぐに再生能力や増殖能力を失います。し たがってスポーツに適応したアスリートの心臓でも心筋細胞の数は増えずに心筋細 胞が肥大することで適応します。また何らかの心臓病で心筋細胞がダメージを受ける と、再生能力や増殖能力のない心筋細胞はその数が減るために、心機能は低下する と考えられてきました。しかしマウスの心筋炎モデルでは一部の心筋細胞が修復さ れて、再生する現象が確かめられています。この現象が心筋梗塞などの身近な心臓 病でも一般的に起きるのか、定量的にどの程度の心筋細胞で起きるのかなどはまだ 不明です。そこで現在は、京都大学の山中伸弥教授が樹立に成功したiPS細胞を心 筋細胞に分化させて、心筋シートを作成する技術が難治性の心不全治療に臨床応 用されており、2016年には保険適応されました。 がんは一般に血流に乏しく熱が加えられると血流で熱を放散できません。細胞の 代謝も正常と異なっておりがん細胞が熱に弱いことは以前から知られていました。こ の性質を利用して、赤外線やマイクロ波などの電磁波を体外から照射することによっ てがん組織を加温してがん細胞を死滅させる治療法はハイパーサーミア(温熱療法) と呼ばれています。がんの治療法は手術、化学療法、放射線療法、免疫療法が主で す。これらを補完するハイパーサーミアは副作用が少なく苦痛をともなわない治療法 としてがんの集学的治療の一翼を担う可能性もあります。 トリビア ❷ ハイパーサーミア

と心

関係

トリビア ❸

がんサバイバーとは

がんの診断を受けた時から生を全うするまでのすべての段階にある方をがんサバ イバーとよびます。がんに対する診断や治療の進歩が著しい現在、がんサバイバーの 方は増加の一途を辿っています。同時に入院治療や外来化学療法などの医療問題、 経済的な問題、就学や就労の問題など、がんサバイバーはさまざまな問題を抱える ケースが増えています。がん関連の心臓病も大きな問題のひとつです。

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