アクティブシニアのための心臓病読本
(15未満)すれば食欲が低下したり、貧血やむくみ、吐き気、だる さ、かゆみなどがでてきたり、疲れがひどくなります。これらでお分 かりのように慢性腎臓病は知らないうちに次第に忍び寄る病気ですか ら、早期の発見と対策が大切といえます。生活習慣病が蔓延している わが国では、1,330万人(20歳以上の人の8人に1人)が慢性腎臓病 とも言われています。もはや慢性腎臓病はあらたな国民病というべき かも知れません。高血圧や糖尿病は慢性腎臓病の原因になります。慢 性腎臓病をそのままにしておくと腎不全という病気に進行するととも に、脳血管障害や心臓、血管の病気を引き起こす場合が多いのです。 腎臓と心臓や血管の間には隠れた関係がありそうです。 心腎連関とは 最近、心腎連関という言葉が健康雑誌にもよく出ています。心臓と 腎臓は、どちらか一方にトラブルが起きると、他方にもトラブルが 生じやすいことが経験的に知られていました。第4章で述べた心不全 の方では、腎臓のはたらきを表すeGFR値も低い方が多くみられます。 逆に慢性腎臓病の方の多くは動脈硬化がみられて心機能も低下してい ます。心臓と腎臓は双方向的に複雑な関係にあるといえます。 もう一度、心不全を振り返ってみましょう(第4章)。心不全で心 臓が拍出する血液の量が減ると腎臓への血流量が減りますから、血圧 を上げてでも腎血流を維持して、腎臓は血液を浄化しようとします。 心不全では心臓へ帰ってくる血液の還流量も減りますから腎静脈の血 圧が上がって腎臓に負担をかけることになります。心臓のはたらきが 弱くなることは生命の危機ですから、さまざまなバックアップの仕組 みが働きます。このバックアップとは自律神経やホルモンのことです。 自律神経(交感神経)は心臓にはたらいて心臓を叱咤激励します。血 3
第 6 章 腎 臓
と心
臓
の
複
雑
な
関
係
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