アクティブシニアのための心臓病読本
第 5 章 高 齢
トリビア❶
遠隔モニタリング
近年、ペースメーカーや植え込み型除細動器、心臓再同期療法などのデバイスは、 携帯電話回線などを利用して内部の情報を病院に送ることが出来るようになってい ます。このような医療サービスを遠隔モニタリングといいます。これらのデバイスは不 整脈や心不全の治療を行うと同時に心臓の状態をモニタリングしてくれますので、そ れらの情報が来院せずに毎日自動的に病院に送信されれば、患者さんにとっても病 院にとっても大きなメリットになります。ただし遠隔モニタリングは緊急対応を行うた めのシステムではなく、デバイス外来をスムースに行うためのシステムです。 がんのみならず生命を脅かす病気は多々ありますが、それらに直面して生活の質 (QOL)が低下している患者さんやご家族に提供される医療は近年、緩和医療と言わ れます。がんや難治性の病気の患者さんやご家族の身体的な苦痛、心理社会的な葛 藤、ときにはスピリテュアルで内面的な問題を発見し、適切に評価を行い、心と体の 痛みを最大限緩和する総合的な医療です。通常、医師、カウンセラー、看護師、薬剤 師、管理栄養士、医療ソーシャルワーカー、介護職などが多職種で緩和ケアチームと して取り組んでいます。したがって終末期にさしかかり回復の見込みのない患者さん を対象とする終末期医療(ターミナルケア)も含まれますが、緩和医療は終末期医療 と同じではありません。 ICDやCRT-Dには除細動機能があります。万一、心室細動が起きれば体内から 直流通電を行います。心室細動を停止させる上では、最も確実な治療法です。しかし ヒトは誰でも終末期を迎えます。これらのデバイスを使用している患者さんが終末期 にさしかかった場合、心室細動が起きる可能性は高くなります。そのような際に電気 ショックを与えた方がよいのか否かは一概には判断できません。心室細動が生命の 危機を助長している場合に電気ショックは有効でしょうが、がんなど難治性の病気の 結果として心室細動が起きていれば、電気的除細動だけでは状態は改善しませんし、 電気ショックにより患者さんの苦痛と心臓へのダメージは大きくなるばかりです。した がってこのような時期にデバイスの除細動機能を停止して欲しいかどうかは、家族や 主治医と事前に繰り返し話し合っておくことが重要です。出来ればデバイスの植え込 み術の際に話し合うことが理想です。これもACP(アドバンストケアプラニング)のひ とつといえるでしょう。除細動機能は簡単な設定変更で停止させることができますか ら患者さんの意思決定により臨機応変に対応することが可能です。 トリビア❷ トリビア❸ 緩和医療と終末期医療 終末期における除細動機能の停止
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