アクティブシニアのための心臓病読本
第 2 章 心 臓
トリビア ❸
心筋細胞における隣接細胞間結合―ギャップ結合
細胞と細胞との接合部は特殊な構造をしておりギャップ結合と呼ばれていま す。心筋のギャップ結合は特殊な蛋白質で構成された極めて細い管状の通路 (ギャップ結合チャネル)で隣接細胞と繫がっている構造をしており隣接細胞 間の興奮(刺激)伝導の場として働いています。その蛋白質の種類や分布密度 などは部位によって異なっています(遺伝子で制御されています)。伝導速度 の遅い洞房結節や房室結節では、チャネルの数は少なく密度は低い(粗)ので す。一方、伝導速度の速いヒス束、左脚・右脚、プルキンエ線維ではチャネル の数が多く高い密度をもっています。心室筋や心房筋はその中間の性質を持っ ています。チャネルの数や開閉は伝導速度に変化を与えます。すなわち、チャ ネル発現が多ければ、開口が促進すれば興奮伝導速度は高まります。逆に、発 現が少なくなれば、閉口すれば伝導速度は低下します。これらは細胞内の蛋白 リン酸化物質、脱リン酸化物質、酸度(pH)、Caイオンなどの心筋代謝の変 化で微妙に調節されています。 筋血流量は運動により増加します。これを心拍出量から考えてみましょう。 健常成人:安静時:心拍出量の20%でおよそ1ℓ/分 最大運動時:心拍出量の80% でおよそ20ℓ/分(安静時の約20倍) 健常高齢者(70~80歳):安静時:心拍出量の20%でおよそ0.8ℓ/分 最大運動時:心拍出量の60~70%で10~12ℓ/分(安静時の約15倍) 運動習慣によりこの値は増加します。高齢者で筋血流量が低下する理由とし て、心拍出量の減少、筋肉の血管拡張機能の低下、筋萎縮による血管床の減少 などが考えられます。 トリビア ❹ 筋血流量
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