アクティブシニアのための心臓病読本

心筋は個々の細胞から構成されていますが、心筋束の一部に刺激が 伝わると心筋全体が殆ど同時にあたかも1個の細胞のように収縮しま す(機能的合胞体)。心房全体は同時に、心室全体は同時に収縮します。 これは、先に述べたように隣接細胞はギャップ結合で繫がっているので、 刺激は細胞間を素早く伝わって行くことに起因します。 健常者では心房が収縮し心室が弛緩するまでおよそ500~600ミリ 秒(msec)(0.5~0.6秒)です。これが1拍動の時間です。心拍の間 隔は1拍動毎の休憩時間およそ0.3~0.4秒を加えた値です。 交感神経のアドレナリンはCaイオンの細胞内への流入を促進し収 縮を増強させ、副交感神経のアセチルコリンは逆の作用で収縮を弱め ます。また、Caイオンの排除が遅れると弛緩速度は遅くなり、心拍 数が増加する程収縮力は弱くなります。このように、Caイオンチャ ネルや筋小胞体機能などの障害により、収縮障害や不整脈などの疾病 が惹起されます。高齢者ではCaの排除機構が減退しますので弛緩速 度の低下がみらます。 心臓の収縮筋はゴムのような性質があり、伸ばせば縮む力は強く なります。すなわち心室に充満する血液が増加すれば心筋は伸展さ れ、縮む力すなわち収縮力は大きくなります(Frank-Starling心臓の

法則) 図8 。成人では血液 量はおよそ体重の13分の 1ですが、動脈血量に較べ 静脈血量が7倍も多いので す 図9 。運動すると心臓に 静脈血として還って来る血 液量は多くなるので心室筋 は伸展し、結果的に心室の 収縮力は大きくなり心室か ら拍出される血液量は多く

図8 フランク・スターリングの法則 心 筋 収 縮 力・ 1 回 心 拍 出 量

静脈血還流量 心筋伸展長

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